いけぐち社労士事務所

社員が10人・50人以上になったとき選任が必要な安全・衛生推進者、安全・衛生管理者とは?

会社は、労働災害を防止し、快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて、社員の安全と健康を確保するようにしなければなりません。(労働安全衛生法第3条第1項)

そのため業種を問わず、社員が10人以上になった時は「安全衛生推進者または衛生推進者」、50人以上になった時は「衛生管理者(建設業など一定の業種では「安全管理者」も)」を選任し、安全や衛生に関する技術的事項を管理させなければなりません。

この記事では、社員が10人以上になった時、50人以上になった時に、選任が必要な安全推進者または衛生推進者、安全管理者・衛生管理者などの資格要件や業務の内容などについて、詳しく解説します。

社員が10人以上になった!選任が必要な「安全衛生推進者」とは?

常時10人以上50人未満の労働者を使用する事業場の事業主は、建設業や製造業などの安全管理者を選任しなければならない業種では「安全衛生推進者」を、それ以外の業種では「衛生推進者」を選任しなければなりません。

安全衛生推進者や衛生推進者は、選任しなければならない事由が発生した日から14日以内に選任しなければなりません。

よって、すべての業種で、社員が10人以上になった場合、14日以内に「安全衛生推進者」または「衛生推進者」を選任しなければなりません。なお労働基準監督署への報告義務はありません。

(安全衛生法第12条の2、安全衛生法第12条の3)

「安全衛生推進者」または「衛生推進者」は、原則として事業場に専属の者を選任しますが、労働安全コンサルタント、労働衛生コンサルタントその他厚生労働大臣が定める者のうちから選任するときは、社員である必要はありません。

安全衛生推進者(衛生推進者は、衛生に関連する業務に限る)は、下記1~4などの業務を行います。

安全衛生推進者(衛生推進者は、衛生に関連する業務に限る)の業務
1.労働者の危険又は健康障害を防止するための措置に関すること。
2.労働者の安全又は衛生のための教育の実施に関すること。
3.健康診断の実施その他の健康の保持増進のための措置に関すること。
4.労働災害の原因の調査及び再発防止対策に関すること。

安全衛生推進者・衛生推進者に資格は必要?

安全衛生推進者または衛生推進者は、次の1~5の中から選任しなければなりません。

1 大学、高等専門学校卒業者で1年以上安全衛生または衛生の実務に従事している者

2 高等学校、中等教育学校卒業者で3年以上安全衛生または衛生の実務に従事している者

3 安全衛生または衛生の実務経験5年以上の者

4 労働安全コンサルタント、労働衛生コンサルタント等の資格を有する者

5 都道府県労働局長の登録を受けたものが行う講習修了者

(平成5年労働省告示第23号)

実務経験がない人や1~3の実務経験年数が足りない人、4の資格を取得していない人は、5の講習を修了することで、安全衛生推進者または衛生推進者になることができます。

なお5の講習は、学歴や実務経験は関係なく誰でも受講できます。

社員が50人以上になったとき選任が必要な「衛生管理者」とは?

業種に関係なく、常時50人以上の労働者を使用する事業場の事業者は、選任すべき事由が発生してから14日以内に「衛生管理者」を選任し、遅滞なく労働基準監督署に報告しなければなりません。

(安全衛生法第12条第1項)

よって、社員が50人以上になった場合、14日以内に「衛生管理者」を選任し、遅滞なく労働基準監督署に報告しなければなりません。なお衛生管理者が、病気や事故、旅行などで職務を行えない場合は、代理者を選任しなければなりません。

衛生管理者の人数は、事業場の規模によって違い、下記のようになります。

事業場の規模(労働者数)選任が必要な衛生管理者数
50人以上~200人以下1人以上
200人超~500人以下2人以上
500人超~1,000人以下3人以上
1,000人超~2,000人以下4人以上
2,000人超~3,000人以下5人以上
3,000人超6人以上

衛生管理者は、原則として、その事業場の専属の社員を選任しなければなりません。

ただし2人以上の衛生管理者を選任する場合で、衛生管理者の中に労働衛生コンサルタントがいるときは、労働衛生コンサルタントのうち一人については専属でなくても差し支えありません。

衛生管理者になるのに資格は必要?業務の内容は?

衛生管理者は、次の免許保有者等の中から選任しなければなりません。

第二種衛生管理者免許の保有者は、建設業、製造業など安全管理者の選任が必要な業種の衛生管理者になることができません。

事業場の規模(労働者数)選任が必要な衛生管理者数
50人以上~200人以下1人以上
200人超~500人以下2人以上
500人超~1,000人以下3人以上
1,000人超~2,000人以下4人以上
2,000人超~3,000人以下5人以上
3,000人超6人以上

衛生管理者は、原則として、その事業場の専属の社員を選任しなければなりません。

ただし2人以上の衛生管理者を選任する場合で、衛生管理者の中に労働衛生コンサルタントがいるときは、労働衛生コンサルタントのうち一人については専属でなくても差し支えありません。

衛生管理者になるのに資格は必要?業務の内容は?

衛生管理者は、次の免許保有者等の中から選任しなければなりません。

第二種衛生管理者免許の保有者は、建設業、製造業など安全管理者の選任が必要な業種の衛生管理者になることができません。

    業種          衛生管理者になれる人
建設業、製造業など安全管理者の選任が必要な業種第一種衛生管理者免許保有者、衛生工学衛生管理者免許保有者または医師、歯科医師、労働衛生コンサルタント、厚生労働大臣の定める者
安全管理者の選任が不要な業種第一種衛生管理者免許保有者、第二種衛生管理者免許保有者、衛生工学衛生管理者免許保有者、医師、歯科医師、労働衛生コンサルタント、その他厚生労働大臣が定める者

衛生管理者の業務内容は、下記(1)~(4)のうち、衛生に関する技術的事項の管理を行います。

(1) 労働者の危険又は健康障害を防止するための措置に関すること。
(2) 労働者の安全又は衛生のための教育の実施に関すること。
(3) 健康診断の実施その他の健康の保持増進のための措置に関すること。
(4) 労働災害防止の原因の調査及び再発防止対策に関すること。

また、衛生管理者は少なくとも毎週1回作業場等を巡視し、設備、作業方法または衛生状態に有害のおそれがあるときは、直ちに、労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければなりません。

社員が50人以上になった!安全管理者の選任が必要な業種は?

常時50人以上の労働者を使用する建設業や製造業など、一定の業種の事業者は、選任すべき事由が発生してから14日以内に「安全管理者」を選任し、遅滞なく労働基準監督署に報告しなければなりません。

(安全衛生法第11条第1項)

よって建設業や製造業などの会社で、社員が50人以上になった時は、「安全管理者」を14日以内に選任し、遅滞なく労働基準監督署に報告しなければなりません。なお安全管理者が、病気や事故、旅行などで職務を行えない場合は、代理者を選任しなければなりません。

安全管理者を選任しなければならない業種は、下記の業種となっています。

安全管理者を選任しなければならない業種
林業、鉱業、建設業、運送業、清掃業、製造業(物の加工業を含む。 ) 、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・じゅう器等卸売業、各種商品小売業、家具・建具・じゅう器小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業、自動車整備業、機械修理業

安全管理者は、原則として事業場に専属の者を選任しなければなりません。ただし、選任する安全管理者が2人以上で、その中に労働安全コンサルタントがいる場合は、労働安全コンサルタントのうち1人については、事業場に専属の者である必要はありません。

また下記の事業場規模の業種では、少なくとも1人専任の安全管理者を選任しなければなりません。

      少なくとも1人専任の安全管理者を選任しなければな業種事業場の規模(労働者数)
建設業、有機化学工業製品製造業、石油製品製造業300人以上
無機化学工業製品製造業、化学肥料製造業、道路貨物運送業、港湾運送業500人以上
紙・パルプ製造業、鉄鋼業、造船業1,000人以上
選任が必要な業種で上記以外の業種。ただし、過去3年間の労働災害による休業1日以上の死傷者数の合計が100人を超える事業場に限る2,000人以上

出典:昭和27年9月20日、基発第675

安全管理者になるのに資格は必要?業務の内容は?

安全管理者として選任できるのは、1または2のいずれかに該当する者です。

1(1)~(5)のいずれかの
該当者で厚生労働大臣が定める研修(安全管理者選任時研修)の修了者
(1)大学、高専で理科系統の正規課程を修めた卒業者で、その後2年以上産業安全の実務経験がある人
(2)高校、中等教育学校で理科系統の正規学科を修めた卒業者で、その後4年以上産業安全の実務経験がある人
(3)大学、高専で理科系統の課程以外の正規課程を修めた卒業者で、その後4年以上産業安全の実務に従事経験がある人
(4)高校、中等教育学校で理科系統の学科以外の正規学科を修めた卒業者で、その後6年以上産業安全の実務経験がある人
(5)7年以上産業安全の実務経験がある人
(6)その他(職業訓練課程修了者関係)
2.労働安全コンサルタント          実務経験年数の規定なし 

安全管理者は、総括安全衛生管理者が行う業務(安衛法第25条の2第2項により技術的事項を管理する者を選任した場合はその範囲を除く)のうち安全に関連する技術的事項を管理することが必要です。

(安全衛生法第11条第1項)

具体的には、安全管理者は、作業場等を巡視し、設備、作業方法等に危険のおそれがあるときは、直ちにその危険を防止するため必要な措置を講じなければなりません。

            安全管理者が行うべき安全に関する措置
1. 建設物、設備、作業場所または作業方法に危険がある場合の応急措置または適当な防止の措置
2. 安全装置、保護具その他危険防止のための設備・器具の定期的点検・整備
3. 作業の安全についての教育・訓練
4. 発生した災害原因の調査・対策の検討
5. 消防・避難の訓練
6. 作業主任者その他安全に関する補助者の監督
7. 安全に関する資料の作成・収集・重要事項の記録
8. その事業の労働者が行う作業が、他の事業の労働者が行う作業と同一の場所で行われる場合における安全に関しての必要な措置

社員が50人以上になったとき開催が必要な「衛生委員会」とは?

業種に関係なく、常時労働者が50人以上使用する事業場の事業者は、衛生委員会を設置し、毎月1回以上開催しなければなりません。(安全衛生法第18条第1項)

よって社員が50人以上になった場合、衛生委員会を設置し、毎月1回以上衛生委員会を開催しなければなりません。

また社員が50人以上の建設業や製造業の一部、社員が100人以上の小売業や通信業など一部の業種では、安全委員会を設置し、毎月1回以上開催しなければなりません。(安全衛生法第17条第1項)

なお安全委員会と衛生委員会の両方を設けなければならない場合は、それぞれの委員会の設置に代えて、安全衛生委員会を設置することができます。(安全衛生法第19条)

業種事業場の規模(労働者数)安全委員会衛生委員会
1林業、鉱業、建設業、
製造業の一部(木材・木製品製造業、化学工業、鉄鋼業、金属製品製造業、輸送用機械器具製造業)、
運送業の一部(道路貨物運送業、港湾運送業)、
自動車整備業、機械修理業、清掃業
50人以上必要必要
1以外の製造業、1以外の運送業、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・じゅう器等卸売業、各種商品小売業、家具・建具・じゅう器等小売業、 燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業100人以上

50人以上100人未満
必要

義務なし
必要

必要
31と2以外の業種50人以上義務なし必要

安全委員会と衛生委員会は、次のメンバーで構成し、1が議長となります。なお1以外の委員は、事業者が指名し、委員会の構成員の人数については、法令上の定めはありません。

1以外の委員の半数については、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合(過半数で組織する労働組合がない場合は労働者の過半数を代表する者)の推薦に基づき指名しなければなりません。

         安全委員会         衛生委員会
1 総括安全衛生管理者又は事業の実施を統括管理する者若しくはこれに準ずる者(1名)
2 安全管理者※
3 安全に関し経験を有する労働者※
1 総括安全衛生管理者又は事業の実施を統括管理する者若しくはこれに準ずる者(1名)
2 衛生管理者※
3 産業医※
4 衛生に関し経験を有する労働者※

安全委員会では、労働者の危険を防止するための基本対策や労働災害の原因・再発防止対策など安全に関連したもの、衛生委員会では、健康障害を防止するための基本となるべき対策などについて、調査審議します。

出典:厚生労働省「安全衛生に関するQ&A安全委員会、衛生委員会について教えてください。」

まとめ

事業者は、労働者を雇入れたときや作業内容を変更したとき等には、従事する業務に関する安全または衛生のための教育を行わなければなりません。(安全衛生法第59条)

正社員だけでなく、パートタイマーや学生アルバイト、1日だけの臨時のアルバイトなど雇用形態に関係なく、すべての労働者に安全または衛生教育を行わなければなりません。

雇入れ時等の安全衛生教育の内容については、下記の記事をご覧ください。

また労働者を雇入れたときや1年以内ごとに1回(深夜勤務などの一定の有害な業務に就く人には6か月以内ごとに1回)健康診断を行わなければなりません。詳細は、下記の記事をご覧ください。

人材定着率がグングンUPする方法 - メルマガ
人手不足にお悩みの経営者様のために優秀な人材を確保・定着・教育する方法をお伝えしています。

就業規則・各種規程・人事評価制度の作成支援、顧問契約、スポット相談サービスの詳細や料金については、下記をご参照ください。

▼お客様の声

弊所の労務相談、就業規則作成・導入支援などのお客様の声については、下記をご参照ください。

▼お問合せ・お申込み

お問合せ・お申込みは、下記のバナーからお願い申し上げます。

(営業を目的としたお問い合わせはご遠慮ください

モバイルバージョンを終了