厚生労働省では、毎年9月を「職場の健康診断実施強化月間」として集中的・重点的に啓発を実施しています。事業者は、労働者を雇い入れた時や常時使用する労働者に医師による健康診断を受けさせなければなりませんが、正社員だけでなくパート、アルバイトなど健康診断の受診が必要な労働者もいます。
当記事では、職場の健康診断実施強化月間の実施内容とあわせて、健康診断の受診が必要なパート・アルバイトなどについて詳しく解説します。
令和5年度「職場の健康診断実施強化月間」の実施内容は?
令和5年度の強化月間では、下記の(1)~(6)を重点事項として実施するということです。
(1)健康診断及び事後措置等の実施の徹底
(2)健康診断結果の記録の保存の徹底
(3)一般健康診断結果に基づく必要な労働者に対する医師または保健師による保健指導の実施
(4)高齢者の医療の確保に関する法律(昭和57年法律第80号)に基づく医療保険者が行う特定健康診査・保健指導との連携
(5)健康保険法(大正11年法律第70号)に基づく保健事業との連携
(6)平成30年3月29日付け基安労発0329第3号「地域産業保健センター事業の支援対象に関する取扱いについて」を踏まえた小規模事業場における地域産業保健センターの活用
人を雇入れた時や定期的に実施が必要な健康診断は?
事業者は、労働安全衛生法第66条に基づき、人を雇い入れた時や常時使用する労働者に医師による健康診断を受けさせなければなりません。
労働安全衛生法の健康診断には、大きく分けて一般健康診断と特殊健康診断があります。
■一般健康診断(雇入時の健康診断、定期健康診断など)
健康診断の種類 | 対象となる労働者 | 実施時期 |
雇入時の健康診断 (安衛則第43条) | 常時使用する労働者 | 雇入れの際 |
定期健康診断 (安衛則第44条) | 常時使用する労働者 (特定業務従事者を除く) | 1年以内ごとに1回 |
特定業務従事者の健康診断(安衛則第45条) | 深夜業等労働安全衛生規則第13条第1項第2号※1の業務に常時従事する労働者 | 左記業務への配置替えの際、 6月以内ごとに1回 |
海外派遣労働者の健康診断(安衛則第45条の2) | 海外に6ヶ月以上派遣する労働者 | 海外に6月以上派遣する際、帰国後国内業務に就かせる際 |
給食従業員の検便 (安衛則第47条) | 事業に附属する食堂または炊事場における給食の業務に従事する労働者 | 雇入れの際、配置替えの際 |
※1:労働安全規則第13条第1項第2号に掲げる業務
イ多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務
ロ多量の低温物体を取り扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務
ハ ラジウム放射線、エツクス線その他の有害放射線にさらされる業務
ニ 土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務
ホ 異常気圧下における業務
ヘ さく岩機、鋲打機等の使用によつて、身体に著しい振動を与える業務
ト 重量物の取扱い等重激な業務チボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署
チ ボイラ製造等強烈な騒音を発する場所における業務
リ 坑内における業務
ヌ 深夜業を含む業務
ル 水銀、砒素、黄りん、弗化水素酸、塩酸、硝酸、硫酸、青酸、か性アルカリ、石炭酸その他これらに準ずる有害物を取り扱う業務
ヲ 鉛、水銀、クロム、砒素、黄りん、弗化水素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、二硫化炭素、青酸、ベンゼン、アニリンその他これらに準ずる有害物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所における業務
ワ 病原体によつて汚染のおそれが著しい業務カその他厚生労働大臣が定める業務
■特殊健康診断
下記の有害な業務に常時従事する労働者等に対し、原則として雇入れ時または下記の業務に配置替えの際および6月以内ごとに1回(じん肺健診は管理区分に応じて1~3年以内ごとに1回)特別の項目についての健康診断が必要です。
健康診断の種類 | 対象となる労働者 |
特殊健康診断 | ・屋内作業場等における有機溶剤業務に常時従事する労働者(有機則第29条) ・鉛業務に常時従事する労働者(鉛則第53条) ・四アルキル鉛等業務に常時従事する労働者(四アルキル鉛則第22条) ・特定化学物質を製造し、または取り扱う業務に常時従事する労働者及び過去に従事した在籍労働者(一部の物質に係る業務に限る)(特化則第39条) ・高圧室内業務又は潜水業務に常時従事する労働者(高圧則第38条) ・放射線業務に常時従事する労働者で管理区域に立ち入る者(電離則第56条) ・除染等業務に常時従事する除染等業務従事者(除染則第20条) ・石綿等の取扱い等に伴い石綿の粉じんを発散する場所における業務に常時従事する労働者及び過去に従事したことのある在籍労働者(石綿則第40条) |
じん肺健診 | ・常時粉じん作業に従事する労働者及び従事したことのある管理2または管理3の労働者(じん肺法第3条、第7~10条) 注:じん肺の所見があると診断された場合は、労働局に健診結果とエックス線写真を提出する必要あり |
歯科医師による健康診断 | 塩酸、硝酸、硫酸、亜硫酸、弗化水素、黄りんその他歯又はその支持組織に有害な物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所における業務に常時従事する労働者 (安衛則第48条) |
出典:厚生労働省「労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう~労働者の健康確保のために~」
6月以内ごとに1回健康診断の受診が必要な深夜勤務者とは?
深夜業務などの有害業務に常時従事する労働者には、6月以内ごとに1回、定期的に医師による健康診断の実施が必要です。深夜業務などの有害業務に常時従事する労働者とは
「深夜業(午後10時~午前5時までの間に業務に従事)を1週間に1回以上、または1月に4回以上行う労働者」
が該当します。
健康診断の受診が必要なパート・アルバイトとは?
健康診断の受診が必要な「常時使用される労働者」は、正社員だけではありません。
週の所定労働時間が、正社員の3/4以上で
(1)無期契約のパート、アルバイト
(2)契約期間が1年以上の有期契約のパート、アルバイト
(契約更新により1年以上となる場合も含む)
(3)契約期間が6ヶ月以上1年未満の有期契約のパート、アルバイト
(契約更新により6ヶ月以上となる場合も含む)
の(1)~(3)の中で、どれかに該当するパート、アルバイトなどの労働者に健康診断を実施する義務があります。
また学生アルバイトも労働者なので、(1)~(3)の中でどれかに該当し、深夜シフト勤務(午後10時~午前5時までの間に業務に従事)を週1回以上または月4回以上をしている場合は、雇入れ時・配置替え時・6月以内ごとに1回の健康診断の実施が必要です。
健康診断の費用・受診した時間分の賃金は支払う必要がある?
一般健康診断・特殊健康診断の費用は、事業者が負担しなければなりません。
一般健康診断を受診していた時間分の賃金については、労使協議により定めるべきとされ、支払いが望ましいとされいます。
一方、特殊健康診断を受診していた時間分の賃金を支払う必要があります。
健康診断の受診は、事業者の義務なので、必ず受診してもらうためにも一般健康診断についても賃金を支払っておきたいですね。
従業員が50人以上の経営者の方は、「定期健康診断結果報告書」の提出も必要なのでご注意ください。
出典:厚生労働省「健康診断個人票や定期健康診断結果報告書等について、医師等の押印等が不要となります。」
下記の記事も、ご覧ください。