現在、共働き家庭が増え、育児休業を取得する男性が増えています。厚生労働省の令和5年度育児休業取得率の調査結果によると、女性の取得率は87.6%、男性の育児休業(産後パパ育休も含む)取得率は37.9%(令和4年度調査24.2%)と男性の育児休業取得率が、年々増えています。
出典:厚生労働省「令和5年度育児休業取得率の調査結果公表、改正育児・介護休業法等の概要について」
男性・女性が、仕事と育児を両立できるように、育児・介護休業法、 次世代育成支援対策推進法の改正により、2025(令和7)年4月1日からと2025(令和7)年10月1日から育児期の柔軟な働き方を実現するための措置の拡充などが2段階で施行されます。
この記事では、2025(令和7)年4月1日からと2025(令和7)年10月1日から企業に義務づけられる仕事と育児の両立支援制度・措置などについて解説します。
2025年4月から新たに給付が受けられる両立支援制度・措置は?
度重なる法改正により、現在、妊娠中から子供の小学校入学前まで、下記表の両立支援制度・措置があります。
男女雇用機会均等法が対象とする制度又は措置 | 育児・介護休業法が対象とする制度又は措置 |
1.産前休業 | ①育児休業(出生時育児休業を含む) |
2.妊娠中及び出産後の健康管理に関する措置 (母性健康管理措置) | ②子の看護休暇 |
3.軽易な業務への転換 | ③所定外労働の制限 |
4.変形労働時間制での法定労働時間を超える 労働時間の制限、時間外労働及び休日労働の 制限並びに深夜業の制限 | ④時間外労働の制限 |
5.育児時間 | ⑤深夜業の制限 |
6.坑内業務の就業制限及び危険有害業務の就業制限 | ⑥育児のための所定労働時間の短縮措置 |
⑦始業時刻変更等の措置 |
上記の両立支援のうち、公的給付があるのは、下記の両立支援制度です。
時期 | 給付名 | 給付内容 |
産前・産後休業中 | 出産手当金 | 産前産後休業の期間中、健康保険から1日につき、原則として賃金の3分の2相当額を支給 |
出産(産前・産後休業中) | 出産育児一時金 | 健康保険の加入者が出産したとき、1児につき50万円を支給(産科医療補償制度加算対象出産でない場合は48万8千円) |
出生時育児休業中(産後パパ育休中) | 出生時育児休業給付金 | 休業開始時賃金日額*×支給日数×67%を支給 |
育児休業中 | 育児休業給付 | 休業開始時賃金日額(i) × 支給日数 × 67 % (支給日数が181日以降は50%) |
*原則、育児休業開始前6か月間の賃金を180で除した額
❄支給日数が181日以降は50%
なお経済支援として、産前産後休業中、育児休業中、出生時育児休業中は、申出により健康保険料と厚生年金保険料の支払いが免除されます。
出典:厚生労働省リーフレット「育児休業 、産後パパ育休や介護休業 をする方を経済的に支援します」
2025(令和7)年4月1日から、新たに「出生後休業支援給付」と「育児時短就業給付」が創設され、下記の給付を受給できるようになります。
給付名 | 支給要件 | 給付内容 |
出生後休業支援給付 | 子の出生直後の一定期間以内(男性は子の出生後8週間以内、女性は産後休業後8週間以内)に被保険者とその配偶者*の両方が14日以上の育児休業を取得する場合 | 最大28日間、休業開始前賃金の13%相当額を給付 →育児休業給付とあわせて給付率80%(手取りで10割相当)へと引き上げる |
育児時短就業給付 | 被保険者が2歳未満の子を養育するために時短勤務をしている場合 | 時短勤務中に支払われた賃金額の10% |
※ 配偶者が専業主婦(夫)の場合や、ひとり親家庭の場合などには、配偶者の育児休業の取得を求めずに給付率を引き上げる
出典:厚生労働省「職業安定分科会雇用保険部会(第199回)資料3財政運営(育児休業給付)について」
2025年4月から変わる子の看護等休暇と残業免除の内容は?
育児・介護休業法の改正により、2025(令和7)年4月1日から子の看護等休暇・所定外労働の制限(残業免除)の対象拡大等が施行されます。
改正内容 | 2025年4月1日から | 現在 |
子の看護休暇の見直し (全事業主が対象/義務) | 【対象となる子の範囲】 小学校3年生修了まで 【取得事由】 ①病気・けが ②予防接種・健康診断 ③感染症に伴う学級閉鎖等 ④入園(入学)式、卒園式 【労使協定の締結により除外できる労働者】 ①所定労働日数が週2日以下 *②継続雇用期間6か月未満を撤廃 【名称変更】 子の看護等休暇 | 【対象となる子の範囲】 小学校就学始期に達するまで 【取得事由】 ①病気・けが ②予防接種・健康診断 【労使協定の締結により除外できる労働者】 ①所定労働日数が週2日以下 ②継続雇用期間6か月未満 【名称】 子の看護休暇 |
所定外労働の制限(残業免除)の対象拡大 (全事業主が対象/義務) | 小学校就学前の子を養育する労働者が子を養育するために請求した場合、事業主は所定労働時間を超えて労働させてはならない。 | 3歳未満の子を養育する労働者を養育する労働者が子を養育するために請求した場合、事業主は所定労働時間を超えて労働させてはならない。 |
短時間勤務制度(3歳未満)の代替措置にテレワーク追加 (全事業主が対象/努力義務) | 【代替措置】 ①育児休業に関する制度に準ずる措置 ②始業時刻の変更等 ③テレワーク | 【代替措置】 ①育児休業に関する制度に準ずる措置 ②始業時刻の変更等 |
育児のためのテレワーク導入 (努力義務) | 3歳未満の子を養育する労働者がテレワークを選択できるように措置を講ずることが、事業主に努力義務化 | 右記の措置なし |
育児休業取得状況の公表義務適用拡大(右記に該当する事業主が対象/義務) | 従業員数300人超の企業 | 従業員数1,000人超の企業 |
なお子の看護等休暇の取得可能日数は、現行日数(1年間に5日、子が2人以上の場合は10日)のままで、変更はありません。
2025年10月から義務化!仕事と育児の両立に関する意向聴取とは?
現在、女性労働者本人または男性労働者が、妻の妊娠・出産等の申出をした場合、事業主は、育児休業・出生時育児休業に関する制度等の周知と休業取得の意向確認を個別に行わなければなりません。
2025(令和7)年10月1日から事業主は、女性労働者本人または男性労働者が、妻の妊娠・出産等の申出をしたときと、子が3歳になる前に下記についての個別の意向聴取・配慮等も義務付けられます。
改正内容 | 2025年10月1日から | 現在 |
「柔軟な働き方を実現するための措置等」がすべての事業主に義務付け (全事業主が対象/義務) | 3歳から小学校就学前の子を養育する労働者に以下5つの選択して講ずべき措置中から2つ以上の措置を選択して講ずる必要がある →労働者は、事業主が講じた措置の中から1つを選択して利用することができる 【選択して講ずべき措置】 ①始業時刻等の変更 ② テレワーク等(10日以上/月) ③ 保育施設の設置運営等 ④養育両立支援休暇の付与(10日以上/年) ⑤ 短時間勤務制度 | ・3歳から小学校就学前の子を養育する労働者に対する左記の措置についての義務無 |
柔軟な働き方を実現するための措置等の「個別周知と意向確認」がすべての事業主に義務付け (全事業主が対象/義務) | 3歳から小学校就学前の子を養育する労働者に*子が3歳の誕生日の1か月前までの1年間に下記の個別周知と意向確認義務 【個別周知の内容】 ① 事業主が上記で選択した対象措置(2つ以上)の内容 ② 対象措置の申出先 (例:人事部など) ③ 所定外労働(残業免除)・時間外労働・深夜業の制限に関する制度 | 3歳から小学校就学前の子を養育する労働者に対する左記の個別周知と意向確認義務無 |
「仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取」がすべての事業主に義務付け (全事業主が対象/義務) | 【意向聴取の時期】 「妊娠・出産等の申出時」と「*子が3歳の誕生日の1か月前までの1年間」 【聴取内容】 ① 勤務時間帯(始業および終業の時刻) ② 勤務地(就業の場所) ③ 両立支援制度等の利用期間 ④ 仕事と育児の両立に資する就業の条件(業務量、労働条件の見直し等) | 左記の意向聴取義務無 |
「聴取した労働者の意向についての配慮」がすべての事業主に義務付け(全事業主が対象/義務) | 上記①~④について聴取した仕事と育児の両立に関する意向について、自社の状況に応じて 配慮しなければならない。 (具体的な配慮の例) ・勤務時間帯、勤務地にかかる配置 ・両立支援制度等の利用期間等の見直し ・業務量の調整 ・労働条件の見直し など | 左記の義務無 |
「子が3歳の誕生日の1か月前までの1年間」とは、「1歳11か月に達した日の翌々日から2歳11か月に達する日の翌日まで」とされています。
なお個別周知と意向確認・意向聴取の方法は、「面談」 「書面交付」 「FAX」 「電子メール等」 のいずれかで行い、「面談」はオンライン面談も可能で、「FAX」 と「電子メール等」は労働者が希望した場合のみ行えるということです。
出典:厚生労働省リーフレット「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内(令和6年11月作成)」
上記をまとめると、2025(令和7)年10月1日から事業主は、「労働者が妊娠・出産を申出時」と「労働者の子が3歳の誕生日の1か月前までの1年間」に、下記を実施する必要があるため早めに対応しましょう。
労働者が妊娠・出産を申出時 | 労働者の子が3歳の誕生日の1か月前までの 1年間 |
・育児休業制度等の個別周知と意向確認 ・仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取と聴取した労働者の意向についての配慮 | ・柔軟な働き方を実現するための措置等の個別周知と意向確認 ・仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取と聴取した労働者の意向についての配慮 |
まとめ
従業員10人以上の会社等は、今回の改正により、就業規則や育児・介護休業規程の見直しが、必要です。また労使協定の締結により、除外できる労働者を定めている場合は、労使協定の見直しも必要なため、2025年3月末までに必ず対応しておきましょう。
就業規則や育児・介護休業規程、賃金規程などの各種規程に関する診断・変更・作成やお客様の声については、下記をご覧ください。
下記の記事もご覧ください。
顧問契約、スポット相談、就業規則・各種規程・人事評価制度の作成支援サービスの詳細や料金については、下記をご参照ください。
▼お問合せ・お申込み
お問合せ・お申込みは、下記のバナーからお願い申し上げます。
(営業を目的としたお問い合わせはご遠慮ください)