2023(令和5)年4月1日から、厚生労働省が指定する「資金移動業者」の口座へ賃金のデジタル払いが可能になりました。2024(令和6)年8月9日現在、PayPayが、厚生労働大臣の指定を受け賃金のデジタル払いが認められています。これを受けソフトバンクグループ10社は、2024年9月分の給与からPayPayアカウントへ給与をデジタル払いすると発表しています。
auPay、楽天ペイ、Airペイも、資金移動業者の指定を受けるため厚生労働省に申請し、2024年8月9日現在、審査中ですが、これらの会社でも認められ次第、賃金のデジタル払いが開始すると思われます。
この記事では、賃金のデジタル払い制を導入するために必要な手続きなどについて、詳しく解説します。
賃金支払いの5原則とは?
労働基準法で、賃金は「通貨で」「全額を」「労働者に直接」「毎月1回以上」「一定の期日に」支払われなければならないという「賃金支払いの5原則」が定められています。
(労働基準法第24条第1項、第2項)
ただし労働者の同意を得た場合は、労働者が指定する銀行口座などに、賃金を振り込むことができます。
労働基準法施行規則の一部を改正する省令(令和4年厚生労働省令第 158 号)により、厚生労働大臣の指定を受けた資金移動業者の口座へ、賃金をデジタル払いすることが、認められることになりました。
出典:賃金の口座振込み等について(令和4年11月28日付け基発1128 第4号)
デジタル払いを導入するために必要な手続きは?
賃金のデジタル払いを導入するするためには、下記の手続きが必要です。
1 | 厚生労働省HPに掲載されている「指定資金移動業者一覧」で、厚生労働大臣の 指定を受けた資金移動業者とそのサービスの名称等を確認する。 |
2 | 導入する指定資金移動業者のサービス(複数でも可)を検討する。 |
3 | 事業場に労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合と、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合は、労働者の過半数を代表する者と、労使協定を締結する |
4 | 労使協定を締結した上で、賃金のデジタル払いを希望する労働者に対して、賃金のデジタル払いに関する必要事項を説明する。 |
5 | 労働者から、書面または電磁的記録で個別の同意を得る。 |
6 | 賃金支払いの実務を行うために必要な手続きについて、導入する指定資金移動業者のサービス内容にて確認する。 |
出典:厚生労働省リーフレット「【使用者向け】賃金のデジタル払いを導入するにあたって必要な手続き」
賃金のデジタル払いを導入するために必要な労使協定には、以下の事項を記載する必要があります。
(1)対象となる労働者の範囲
(2)対象となる賃金の範囲とその金額
(3)取扱指定資金移動業者の範囲
(4)実施開始時期
また同意書には、賃金のデジタル払いを行う口座に賃金を振り込むために必要な以下の情報などを記載してもらう必要があります。
(1)希望する賃金の範囲及びその金額(例:定期賃金●●円、賞与〇〇円、退職金□□円)
(2)労働者が指定する指定資金移動業者名、サービスの名称、口座番号(アカウントID)及び名義人(その他口座を特定するために必要な情報があればその事項)
(3)指定資金移動業者口座への支払開始希望時期
(4)代替口座として指定する金融機関店舗名又は証券会社店舗名、口座番号、名義人
同意書(日本語版・多言語翻訳版)や賃金の支払い方法に関する労使協定の様式例は、厚生労働省HPの下記のページに掲載されているため、ご参照ください。
出典:厚生労働省「資金移動業者の口座への賃金支払(賃金のデジタル払い)について」
会社がデジタル払いを導入!労働者全員デジタル払い?
会社が、賃金のデジタル払い制度を導入した場合でも「今まで通り銀行口座に振り込んでほしい」とデジタル払いを希望しない労働者に、デジタル払いを強要できません。またデジタル払いを希望する労働者が「毎月の給料のうち10万円をPayPayで、残りは銀行口座に振り込んでほしい」と希望した場合、賃金の一部をデジタル払い、残りを銀行口座に振り込む必要があります。
現在、PayPayでは、労働者指定口座の受入上限額を20万円としています。よってPayPayアカウントの給与残高が20万円を超えた分は、あらかじめ同意書に記載してもらった銀行口座などにPayPayから自動送金されます。
まとめ
賃金の決定、計算および支払の方法、賃金の締切りおよび支払の時期については、就業規則に必ず記載が必要な「絶対的必要記載事項」です。賃金のデジタル払い制を導入する場合、就業規則や賃金規程の見直しをしておきましょう。
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