
総務省統計局HP「統計からみた我が国の高齢者-「敬老の日」にちなんで-」によると2024年の総人口に占める高齢者人口の割合は、過去最高の29.3%だったということです。また15歳以上の就業者総数に占める高齢就業者の割合は、13.5%となり、今や高齢就業者は、貴重な労働力となっています。
出典:総務省統計局「統計トピックス No.142統計からみた我が国の高齢者-「敬老の日」にちなんで-令和6年9月 15 日」
この記事では、2025(令和7)年4月1日から義務付けられている希望者全員65歳までの雇用義務と定年を65歳以上へ引上げた場合などの高年齢労働者に関する助成金について、詳しく解説します。
2025年高年齢・障害者雇用状況報告書の提出期限は?記載例は?
現在、会社が定年を定めるときは、60歳以上にしなければなりません。
(高年齢者雇用安定法8条)
定年の年齢が65歳未満の会社は、高年齢者雇用確保措置として
(1)定年の年齢を65歳以上にする
(2)65歳までの*継続雇用制度を導入(再雇用制度・勤務延長制度など)
(3)定年制を廃止
のうちどれかを制度として導入することが義務づけられ、毎年6月1日現在の高年齢者の雇用状況の報告が必要です。
2025(令和7)年6月1日から、高年齢者・障害者雇用状況報告書の受付が始まり、郵送またはハローワークへの訪所、電子申請のいずれかの方法で提出できます。なお、提出期限は2025(令和7)年7月15日までとなっています。
令和7年高年齢者・障害者雇用状況報告書の提出や記入例などに関する詳細は、厚生労働省ホームページをご参照ください。
参照:厚生労働省「令和7年高年齢者・障害者雇用状況報告の提出について」
2025年4月から希望者全員65歳まで雇用義務化!定年年齢は何歳?
ところで、上記(2)65歳までの*継続雇用制度の適用者は原則として「希望者全員」です。
平成25年3月31日までに労使協定により制度適用対象者の基準を定めていた場合は、その基準を適用できる年齢を令和7年3月31日までに段階的に引き上げなければなりません(平成24年改正法の経過措置)。
(高年齢者雇用安定法第9条)
よって、就業規則の定年退職に関する規定で、
第●●条 社員の定年は満60歳とし、60歳に達した月の末日をもって退職とする。
2 定年到達者が、再雇用を希望した場合は、希望者全員を定年退職日の翌日から1年ごとの個別の労働契約を交わし、嘱託職員として満64歳まで再雇用する。
3 前項の者が、引き続き雇用を希望した場合、労使間で締結した「継続雇用制度における選定基準等に関する協定書」の選定基準及び取扱方法により、個別の労働契約を交わし、65歳まで再雇用する。
となっている場合は、2025(令和7)年4月1日から希望者全員を65歳まで再雇用すると変更する必要があります。
なお65歳定年が、義務付けられるわけではないため、2025年4月以降も60歳定年でも、上記(2)が導入されていれば、問題ありません。
厚生労働省の令和6年「高年齢者雇用状況等報告」(6月1日現在)の集計結果によると、65歳までの高年齢者雇用確保措置を実施済みの企業は99.9%[対前年差変動なし]となっています。
65歳までの高年齢者雇用確保措置の措置内容別の内訳は、
(1)「定年の引上げ」により実施している企業は28.7%[対前年差 +1.8ポイント]
(2)「継続雇用制度の導入」により実施している企業が67.4%[対前年差 -1.8ポイント]
(3)「定年制の廃止」により実施している企業は3.9%[対前年差 変動なし]
と「継続雇用制度の導入」により実施している企業が約7割となっています。また「定年の引上げ」により実施している企業は、前年に比べ1.8ポイント増加しています。
出典:厚生労働省「令和6年「高年齢者雇用状況等報告」の集計結果を公表します(令和6年12月20日)
2021年4月から施行された改正高年齢者雇用安定法とは?
2021年4月1日から、改正高年齢者雇用安定法が始まりました。希望者全員が働ける年齢を、現在の65歳から70歳にすることが「努力義務」となっています。70歳までの就業支援の方法は、下記①~⑤のいずれかとされています。
① 70歳までの定年引上げ
② 70歳までの継続雇用制度の導入
③ 定年退職制度廃止
また高年齢者が希望するときは、70歳まで継続的に④及び⑤の制度を導入
④ 業務委託契約を締結する制度
⑤a.事業主が自ら実施する社会貢献事業に従事できる制度
⑤b.事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業に従事できる制度
出典:厚生労働省「高年齢者雇用安定法の改正~70歳までの就業機会確保~」
厚生労働省の令和6年「高年齢者雇用状況等報告」(6月1日現在)の集計結果によると、70歳までの高年齢者就業確保措置を実施済みの企業は、企業全体の31.9%と前年より2.2ポイント増加しています。
企業の規模別に見ると、中小企業ではは32.4%[前年差+2.1ポイント]、大企業では25.5%[前年差+2.7ポイント]と人手不足を背景に、大企業より中小企業の方が実施割合が高くなっています。
出典:厚生労働省「令和6年「高年齢者雇用状況等報告」の集計結果を公表します(令和6年12月20日)
定年年齢を65歳以上に引き上げた時、もらえる助成金は?
2024年4月1日から、「2024年問題」と言われる運送・物流会社などの自動車運転手や建設業・医師などにも、時間外労働の上限規制が適用されます。
1年間に残業できる上限時間数については、下記の記事をご覧ください。
人手不足が深刻な業種においては、高年齢労働者の定年年齢の引き上げをするケースが増えています。
65歳以上への定年引上げなど、65歳超の労働者に関する雇用推進助成金は、下記の3つがあります。
| 65歳超雇用推進助成金コース名 | 取り組み内容 | 助成金額 |
| 65歳超継続雇用促進コース | 65歳以上への定年引上げなどを実施した事業主に対して助成 | ①65歳以上への定年引上げ 15~30万円 ②66歳~69歳への定年の引上げ 20~105万円 ③70歳未満から70歳以上への定年の引上げ: 30~105万円 ④定年(70歳未満に限る)の定めの廃止: 40~160万円 ⑤希望者全員を66歳~69歳の年齢まで継続雇用する制度導入: 15~60万円 ⑥希望者全員を70歳未満から70歳以上の年齢まで継続雇用する制度導入:30~100万円 ⑦他社による継続雇用制度の導入:支給対象経費の1/2年の定めの廃止 |
| 高年齢者評価制度等雇用管理改善コース | 高年齢者向けの雇用管理制度のの見直し・導入、健康診断を実施するための制度を導入等、高年齢者の雇用環境を整備した事業主に対して助成 | 支給対象経費(その経費が50万円を超える場合は50万円)の60%〔中小企業以外45%〕* |
| 高年齢者無期雇用転換コース | 50歳以上かつ定年年齢未満の有期契約労働者を無期雇用に転換させた事業主に対して助成 | 1人あたり30万円 〔中小企業以外は23万円〕 |
※事業主につき最初の支給に限っては、50万円の経費を要したものとみなす
出典:厚生労働省「令和7年度雇用・労働分野の助成金のご案内(簡略版)」
また、60歳から64歳までの高年齢労働者の処遇の改善に向けて、就業規則や労働協約の定めるところにより、高年齢労働者に適用される賃金に関する規定または賃金テーブルの増額改定に取り組む事業主に対して支給されていた「高年齢労働者処遇改善促進助成金」は、令和7年3月31日で廃止されました。
ただし事前に「賃金規定等改定計画書」を提出し、2025(令和7)年3月31日までに助成金の対象となる措置(※)を行った場合については、経過措置として2025(令和7)年4月1日以降も支給申請ができます。
詳細は、厚生労働省ホームページをご覧ください。
出典:厚生労働省「高年齢労働者処遇改善促進助成金」
まとめ
高年齢労働者が増えたことを受け、転倒災害による骨折など労災が増えています。高年齢労働者の労災事故は、休業4日以上が必要なケースが多いため、労働安全衛生法で義務付けられている雇い入れ時の安全・衛生教育をしっかりと行い、労災の防止に努めましょう。
65歳超雇用推進助成金の申請のため、就業規則の診断・変更・作成のご依頼については、下記をご覧ください。
顧問契約、スポット相談サービスの詳細や料金については、下記をご参照ください。
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