16時間勤務の夜勤シフトで休憩時間は何分必要?夜勤明け当日は法定休日になる?

老健・特養など介護施設の介護福祉士などの介護職員や病院の看護師など交替制の場合、夜勤シフトの時は、「午後16:00から午前10:00まで、途中休憩2時間」といった16時間勤務が多く見受けられます。この記事では、16時間勤務の時の休憩時間は何時間必要かや夜勤明け当日の休日は法定休日になるかについて、1か月単位の変形労働時間制と所定労働時間が、1か月単位の変形労働時間制における限度時間を超えていないか確認できる「労働時間チェックカレンダー(令和6年・令和6年度版)」とともに詳しく解説します。

特定の週や月に法定労働時間を越えて働ける「変形労働制」とは?

労働基準法では、労働者が労働できる時間は、原則として「1日に8時間まで」「1週間に40時間まで(*特例措置対象事業は週44時間)」とされています。(法定内労働時間)

(労働基準法第32条第1項・第2項)

*常時労働者が10人未満の商業・理容業・興行(映画製作の事業を除く)・保健衛生業(病院・診療所・保育所・介護事業所など)・接客娯楽(旅館・飲食店など)

しかし

■1回の夜勤が16時間勤務と長い病院や特別養護老人ホームなど月初・月末・特定の週が忙しい場合は、1か月単位の変形労働時間制

■「ボーナス商戦の季節は忙しいが、2・6月は仕事が少ない」という小売業などのように、季節によって仕事量が大きく違う場合は、1年単位の変形労働時間制

を採用することで、一定要件のもと一定期間を平均して1週間の労働時間が40時間を超えない範囲で、特定の日に8時間を超えたり、特定の週に40時間を超える勤務が可能になります。

1か月単位の変形労働時間制とは?

「1か月単位の変形労働時間制」とは、1か月以内の期間を平均して1週間当たりの労働時間が40時間(特例措置対象事業場は44時間)以内となるように、労働日および労働日ごとの労働時間を設定することにより、労働時間が特定の日に8時間を超えたり、特定の週に40時間(特例措置対象事業場は44時間)を超えたりすることが可能になる制度です(労働基準法第32条の2)。

1か月単位の変形労働時間制を採用するためには、

労働組合や労働者の過半数を代表する者と書面による協定または就業規則その他これに準ずるものにより、下記①~④のすべてを定める必要があります。

■労使協定または就業規則などで定めること

①対象労働者の範囲

②対象期間および起算日

③労働日および労働日ごとの労働時間

④労使協定の有効期間

なお以下の労働者には、1か月単位の変形労働時間制を採用できません。

・満18歳未満の年少者。ただし、満15歳以上満18歳未満の者(満15歳に達した日以後の最初の3⽉31日までの間を除く)については、1週間48時間、1日8時間を超えない範囲で採⽤可

・妊産婦(妊娠中および産後1年を経過しない⼥性)が請求した場合

対象期間中に労働できる時間の上限は?

「月末は棚卸しで忙しいので、いつも残業」など1か月単位の変形労働時間制の対象者は、対象期間中の労働時間を、以下の計算式で計算した上限時間以下とする必要があります。

上限時間=1週間の労働時間*40時間 ×(対象期間の歴日数/7)

*特例措置対象事業は週44時間

1か月単位の変形労働時間の対象期間が1か月の場合、労働できる上限時間は下記の時間数となります。

変形期間31日30日29日28日
法定労働時間が40時間の場合177.1時間171.4時間165.7時間160.0時間
法定労働時間が44時間の場合194.8時間188.5時間182.2時間176.0時間

変形労働時間制を採用していても残業代の支払いが必要な時とは?

1か⽉単位の変形労働時間制を採⽤した場合、割増賃⾦の⽀払いが必要な時間外労働となるのは、以下の時間です。

①1日の法定時間外労働

1日については、8時間を超える時間を定めた日はその時間、それ以外の日は8時間を超えて労働した時間

②1週の法定時間外労働

1週間については、40時間(特例措置対象事業場は44時間)を超える時間を定めた週はその時間、それ以外の週は40時間(特例措置対象事業場は44時間)を超えて労働した時間(①で時間外労働となる時間を除く)

③対象期間の法定時間外労働

対象期間における法定労働時間の総枠を超えて労働した時間(①または②で時間外労働となる時間を除く)

出典:厚生労働省リーフレット「1か月単位の変形労働時間制」

なお1か⽉単位の変形労働時間制を採⽤していても、深夜(午後10時から翌日午前5時までの時間帯)労働をした場合、法定労働時間内であっても深夜労働の割増賃金(2割5分以上)の支払いが必要なのでご注意ください。

16時間勤務の夜勤シフトで休憩時間は何分必要?

使用者は1日の労働時間が6時間を超える場合には少なくとも45分、8時間を超える場合には少なくとも60分の休憩を勤務時間の途中で与えなければいけません(労働基準法第34条)。

よって「1日の労働時間が6時間00分」と6時間ちょうどの場合は、休憩時間を与える必要はありません。また交替制の介護職員や病院の看護師などで「夜勤シフトの時は16時間勤務」と長い場合でも、休憩時間は60分で問題ありません。なお休憩時間は労働者が自由に利用できるものでなければならないので、「休憩中でも患者様や入居者様に対応をするように」と指示されている場合は、休憩時間ではなく労働時間とみなされます。

16時間勤務の夜勤明け当日は法定休日になる?

労働基準法第35条第1項で、労働者に毎週少なくとも1回の休日を与えなければならないとされています。(法定休日)

毎週1回の休日を与えることができない場合は、4週間を通じて4日以上の変形休日という与え方もできます。(労働基準法第35条第2項)

ただし変形休日を採用する場合は、就業規則その他これに準ずるものに4日以上の休日を与えるとする4週間の起算日を明らかにする必要があります。

法定休日は、「1暦日で午前0時~午後12時(0:00~24:00)の継続した24時間」で与えなければなりません。

よって老健や特養など介護施設の介護職員や病院の看護師に多い「16時間勤務の夜勤明け当日と翌日が休み」の場合、夜勤明け当日は、法定休日にはなりません。

なおシフト(番方)編成による交替制(8時間勤務の3交替制のシフト勤務など)を導入するような場合、以下の(イ)(ロ)両方の要件を満たせば法定休日は暦日ではなく、継続した24時間を与えれば差し支えないとされています。

(イ)シフト編成による交替制によることが就業規則等により定められており、制度として運用されていること。

(ロ)各シフトの交替が規則的に定められているものであって、勤務割表等によりその都度設定されるものではないこと。

(昭和63年3月14日付け基発150号)

介護・病院・製造業のシフト作成に「労働時間チェックカレンダー」

介護・病院・製造業など、1か月単位の変形労働時間制を採用している職場では、シフトを作成する場合、各月の所定労働時間が、1か月単位の変形労働時間制における限度時間を超えないようにしなければなりません。所定労働時間が、1か月単位の変形労働時間制における限度時間を超えている場合は、休日を増やすなど限度時間内に調整する必要があります。

静岡県労働局の「労働時間チェックカレンダー(令和6年・令和6年度版)」では、1か月単位の変形労働時間制を採用している場合、下記の手順で各月の所定労働時間が、1か月単位の変形労働時間制における限度時間を超えていないかをチェックできます。

① 1日の労働時間を記入します。

② カレンダーの所定休日の日に○印を記入し、カレンダーを完成する。

③ 各月の休日日数を「休日日数」欄に記入する。

④ 各月の労働日数を「労働日数」欄に記入する。

⑤ 各月の労働時間を計算(1日の労働時間×労働日数)し「所定労働時間」欄に記入する。

⑥ チェックカレンダーの「各月の所定労働時間」と「1か月単位の変形労働時間制における限度時間」を比較し、月の限度時間を超えていないかを確認する。

出典:静岡県労働局労働基準部監督課「労働時間チェックカレンダー1か月単位の変形労働時間制・1年単位の変形労働時間制(令和6年・令和6年度版)」

まとめ

交代勤務は、生活リズムが崩れるので体調管理が難しいです。また介護施設の職員や病院などの看護師は、命を預かる仕事なので、経験の少ない職員には日勤よりストレスがかかります。シフトを作成する時は、夜勤の時は新人を一人にしないようにする、睡眠時間が十分に確保できるようにするなど配慮しましょう。

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