2024年4月1日からバス・タクシー・ハイヤー・トラック運転者や建設業・医師などの時間外労働の上限規制が始まりました。またバス・タクシー・ハイヤー・トラック運転者は、拘束時間などを定めた改善基準告示を守らなければなりませんが、法改正により2024年4月1日から拘束時間や休息時間の一部が変更されています。この記事では、2024年4月1日からのタクシー・ハイヤー運転者の拘束時間や休息時間など改善基準告示の主な変更点と時間外労働の上限規制に対応するため、労働時間の短縮や最低賃金引き上げなど労働環境改善する事業者に対する助成金について詳しく解説します。
タクシーの日勤勤務者2024年4月からの拘束時間や休息時間は?
労働大臣告示「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(改善基準告示)では、自動車運転者の拘束時間(労働時間と仮眠時間も含めた休憩時間)と必要な休息時間(勤務と次の勤務の間の時間)が定められています。労働時間は、運転している時間だけでなく整備や手待ち時間(客待ち時間)なども含まれます。2024年4月から、タクシーの日勤勤務者の拘束時間や休息時間は、下記のようになります。運転中に災害や事故の発生に伴い、道路が封鎖・渋滞したなど、予期し得ない事象に対応した後に確保しなければならない休息時間などについて、新たに規定されています。
タクシーの日勤勤務者の拘束時間・休息期間(改善基準告示第2条第1項第1号~第4号、第2条第3項)
改正後(2024年4月以降) | 2024年3月末まで | |
1か月の拘束時間 | 288時間以内 | 299時間以内 |
1日の拘束時間 | 13時間以内(上限15時間、14時間超は週3回までが目安) | 13時間以内(上限16時間) |
1日の休息時間 | 勤務終了後、継続11時間以上与えるよう努めることを基本とし、9時間を下回らない | 勤務終了後、継続8時間以上必要 |
車庫待ち等の運転者 *2 | ■1か月の拘束時間: 288時間以内(労使協定により1か月300時間まで延長可) ■1日の拘束時間 : 以下の要件を満たす場合、1日24時間まで延長可 ・ 勤務終了後、継続20時間以上の休息期間を与える ・ 1日の拘束時間が16時間を超える回数が1か月について7回以内 ・ 1日の拘束時間が18時間を超える場合、夜間4時間以上の仮眠時間を与える | ■1か月の拘束時間:労使協定により1か月の拘束時間を322時間まで延長可 ■1日の拘束時間 : 以下の要件を満たす場合、1日24時間まで延長可 ・ 勤務終了後、継続20時間以上の休息期間を与える ・ 1日の拘束時間が16時間を超える回数が1か月について7回以内 ・ 1日の拘束時間が18時間を超える場合、夜間4時間以上の仮眠時間を与える |
予期し得ない事象 | 予期し得ない事象への対応時間を、1日と2暦日の拘束時間から除くことができる(※4、5) 勤務終了後、休息期間(1日勤務:継続11時間以上、2暦日勤務:継続24時間以上)が必要 | 規定なし |
休日労働 | 休日労働は2週間に1回を超えない、休日労働によって拘束時間の上限を超えない | 休日労働は2週間に1回が限度 |
*2 車庫待ち等の自動車運転者とは、下記の要件を満たす者とされています。
・ 事業場が人口30万人以上の都市に所在していないこと
・ 勤務時間のほとんどについて「流し営業」を行っていないこと
・ 夜間に4時間以上の仮眠時間が確保される実態であること
・ 原則として、事業場内における休憩が確保される実態であること
※4 : 予期し得ない事象とは、次の事象をいう。
・ 運転中に乗務している車両が予期せず故障したこと
・ 運転中に予期せず乗船予定のフェリーが欠航したこと
・ 運転中に災害や事故の発生に伴い、道路が封鎖されたこと又は道路が渋滞したこと
・ 異常気象(警報発表時)に遭遇し、運転中に正常な運行が困難となったこと
※5: 運転日報上の記録に加え、客観的な記録(公的機関のHP情報等)が必要
タクシーの隔日勤務者2024年4月からの拘束時間や休息時間は?
2024年4月から、タクシーの日勤勤務者の拘束時間や休息時間は、下記のようになりました。運転中に災害や事故の発生に伴い、道路が封鎖・渋滞したなど、予期し得ない事象に対応した後に確保しなければならない休息時間などが、新たに規定されています。
タクシーの隔日勤務者の拘束時間や休息時間(改善基準告示第2条第2項第1号・第2号・第4号、第2条第3項)
改正後(2024年4月以降) | 2024年3月末まで | |
1か月の拘束時間 | 262時間以内。ただし地域的その他特別な事情がある場合、労使協定により270時間まで延長可(年6か月まで) | 262時間以内。ただし地域的事情その他の特別な事情(例えば顧客需要の状況等)がある場合、労使協定により1年のうち6箇月までは、1箇月の拘束時間を270時間まで延長 |
2暦日の拘束時間 | 22時間以内かつ、2回の隔日勤務を平均し1回あたり21時間以内 | 21時間が限度 |
2暦日の休息時間 | 継続24時間以上与えるよう努めることを基本とし、22時間を下回らない | 勤務終了後、継続20時間以上必要 |
車庫待ち等の運転者 *2 | ■1か月の拘束時間: 262時間以内(労使協定により1か月270時間まで延長可。さらに※3の要件を満たす場合、10時間を加えた時間まで延長可) ■2暦日の拘束時間 :下記※3の要件を満たす場合、24時間まで延長可 ※3 ・ 2暦日22時間超及び2回の隔日勤務の平均が21時間超の回数が1か月について7回以内 ・ 夜間4時間以上の仮眠時間を与える | ■下記の場合1か月の拘束時間の限度を262時間または労使協定により262時間を超え270時間以内で定めた時間に20時間を加えた時間まで延長可 ■2暦日の拘束時間の限度は、夜間4時間以上の仮眠時間を与えることにより、24時間まで延長可。ただし労使協定により回数等を定める必要あり(1か月について7回以内) |
予期し得ない事象 | 予期し得ない事象への対応時間を、1日と2暦日の拘束時間から除くことができる(※4、5) 勤務終了後、休息期間(1日勤務:継続11時間以上、2暦日勤務:継続24時間以上)が必要 | 規定なし |
休日労働 | 休日労働は2週間に1回を超えない、休日労働によって拘束時間の上限を超えない | 休日労働は2週間に1回が限度 |
※3 : 2暦日22時間超及び2回の隔日勤務の平均が21時間超の回数が1か月について7回以内。夜間4時間以上の仮眠時間を与える。
2024年4月からハイヤー運転者の拘束時間・休息規制は?
ハイヤーについては、現行どおり拘束時間や休息期間等の規制は適用されません。ただし、時間外労働に関しては、下記のようになっています。(改善基準告示第2条第5項、第3条)
改正後(2024年4月以降) | 2024年3月末まで | |
拘束時間、休息期間 | 適用されない | 適用されない |
時間外労働 | ・1か月45時間、1年360時間まで ・臨時的特別な事情で限度時間を超えて労働させる場合にも、1年960時間まで | 1か月50時間または3か月140時間および1年間450時間の目安時間の範囲内 |
出典:厚生労働省「リーフレットタクシー・ハイヤー運転者の改善基準告示が改正されます!」
出典:厚生労働省「パンフレットタクシー・ハイヤー運転者の労働時間等の改善基準のポイント」
労働時間の短縮や最低賃金引き上げなど労働環境改善の助成金は?
時間外労働の上限規制に対応するため、労働時間の短縮や最低賃金引き上げなど労働環境改善する事業者に対して、下記の助成金があります。
働き方改革推進支援助成金 | 時間外労働の上限規制に円滑に対応するため、生産性を高めながら労働時間の短縮等に取り組む中小企業・小規模事業者を支援 |
業務改善助成金 | 事業場内の最低賃金を引き上げるとともに生産性向上に資する設備・機器の導入等を行った中小企業・小規模事業者を支援 |
人材確保等支援助成金 | 人材の確保・定着を目的として、魅力ある職場づくりのために労働環境向上等を図る企業を支援 |
人材開発支援助成金 | 雇用する労働者を対象に、職務に関連した専門的な知識や技能を習得させるための訓練等を計画に沿って実施する事業主を支援 |
また「人手不足に対応するため、現在60歳で定年後、65歳まで嘱託職員として再雇用しているが、定年年齢を65歳以上に延長したい」など、下記の高年齢労働者に関する助成金もあります。
65歳超雇用推進助成金(65歳超継続雇用促進コース) | 65歳以上への定年引上げ、定年の定めの廃止、希望者全員を対象とする66歳以上の継続雇用制度の導入、他社による継続雇用制度の導入のいずれかを実施した事業主に対して助成するコース |
65歳超雇用推進助成金(高年齢者評価制度等雇用管理改善コース) | 高年齢者向けの雇用管理制度の整備等に係る措置を実施した事業主に対して助成するコース |
65歳超雇用推進助成金(高年齢者無期雇用転換コース) | 50歳以上かつ定年年齢未満の有期契約労働者を無期雇用に転換させた事業主に対して助成を行うコース |
高年齢労働者処遇改善促進助成金 | 60歳から64歳までの高年齢労働者の処遇の改善に向けて、就業規則や労働協約の定めるところにより、高年齢労働者に適用される賃金に関する規定または賃金テーブルの増額改定に取り組む事業主に支給 |
支給要件や申請書のダウンロードなど詳細は、厚生労働省ホームページをご覧ください。
出典:厚生労働省「事業主の方のための雇用関係助成金」
まとめ
2024年4月1日からバス・タクシー・ハイヤー・トラック運転者や建設業・医師などの時間外労働の上限規制が始まりました。改正後のタクシー・ハイヤー運転者の拘束時間や休息時間など改善基準告示への対応と併せて、就業規則の見直しや変更をしましょう。
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